経営者の判断基準をバックアップ

① スケジュールの管理

過去の豊富な開業経験を生かし、スケジュールを設定して、そのスケジュール通り進行するのが最も重要な業務。多くの企業、中でも飲食業では、TODOリストの8割が埋没します。定期ミーティングを設定し、その終了時に「誰が」「何を」「いつまでに」を常に競っているのが重要です。「ぽわ~とした議論」これでは時間の無駄。通信手段をフル活用し、徹底して会議回数を減らす事が重要。協力企業も含めて、TODOの設定と進捗確認、そして、完了確認。開店日にすべての業務を間に合わせること、これが最も重要な仕事です。20代前半から新規業態専門の店長を20年間やってきました。最初は、開店前3日間は徹夜でした。何とかオープンしていた感じ。現在はお客様側の飲食店に対する目も厳しくなっていますから、開店時のドタバタは、悪い口コミに直結します。また、どんなに準備をちゃんとしても実際にお店を開店すると想定と違っていることが発生します。それをどう修正していくか。SNS等で情報の拡散が早い原状では、3ヶ月以内にお客様の深層ニーズに合わせることが繁盛の最重要事項です。

② コンセプトシートの作成と確認

店舗のコンセプトを8つのアイテムから設定し、それを業務進行中に再確認します。多くの人が関わる中で、発生する現象に対して個別に対応していると、コンセプトから少しずつずれて行ってしまうのが通例。関わる人は全員が人格も過去の経験も違いますから、自分の価値観も入って、少しずつ全体に差異が生じる。結果、スタッフの一体感も生まれませんし、開店してみて「なんか、ちょっと違うな。」と言うことになるわけです。
そうならないように店舗の存在意義を意識共有し、何度も確認するのが最初にすべき取り組みです。

③ データ化[文章化]

残念ながら過去私もそうであったように、飲食業の人は感覚論。特に新規事業の開発は、それぞれ「思い」もあるからなおさらです。各人の思いを紙にして、意識の統一を図っていくことこそ、成功が近づきます。
また、商品構成に関しても店舗従事者の感覚論は驚くほど当てになりません。創造する「思い」があるから、実際のABC分析とは大きな差異が発生します。居酒屋においては「枝豆」が一番売れていた。などというのはよくある話です。
開店準備では膨大なやりとりが発生し、資料の更新も何度も発生します。それを時系列に沿って管理する仕組みを作り、確実に明文化することも重要な仕事。

④ 経費管理

既に設備投資の部分でご理解頂いているかとは思いますが、新規開業に経験の少ない経営者は、確実にぼったくられます。
実はそうならない為の手法は難しくないのです。見積をちゃんと取って安いところに発注すること。しかしながら「間に合わない」となるわけです。前出のスケジュール管理とリンクする問題ですが、実際にこれが最も多い。そして、見積をとる条件が一致していないこと。食肉業界の方に言うのも何ですが、変動相場制のものは特に難しい。
どこから買うのが「お値ごろなのか」[品質と値段]。設備投資、経費の最終判断はもちろん経営者。しかしながらそれをわかりやすいかたちにできること、それが私の強みです。建築の見積が確定したこれからは、建築の1/10程度の什器、備品、そして様々な経費が発生します。売上を開ける為の経費は惜しまず、関係ないところは徹底して下げる。その判断、これが一番難しい。

⑤ 店長の仕事とは

私が店長をはじめた30年前は、「店長=経営者」でした。しかしながら、労働人口減少に起因する飲食業の人材不足によって、現在は、「店長=店に毎日いる人」になってしまっています。
チェーン店化やシステム化、機械化による非正規社員による店舗運営に起因する問題ですが、飲食業界が外食産業となり、個人での経営が難しくなって行った経緯ですが、原状では利益を上げられる店は店長教育ができている店です。
世の中ではブラック企業が問題になっていますが、飲食業、特に中小企業では「シュガー店長」の問題があります。
店長の能力が不足する部分、それを支援し、継続的なモチベーションを得られるようにする仕組み作りが大切です。[労働時間と給料のバランス]つぶれる店は、大抵、店長が会社の悪口をスタッフに言っています。負のモチベーションの店内感染。店長の責任ではなくて、店長に経営者並みの能力を期待する会社側の間違いに気がつくべきです。

※ シュガー社員[シュガーしゃいん]とは、社会保険労務士の田北百樹子[たきた ゆきこ]が提唱する、主に若者を中心とした日本的な労働価値観に反感を覚える社会人としての自覚やモラルなどの欠ける者をさす言葉。日本社会以外における労働意識を持った社員も指す造語であり、同業者の石川弘子は同様の社員をモンスター社員と呼んでいる。

⑥ スタッフ教育

マニュアルと言うとどんな印象でしょうか。サービス業はお客様側が多種多様なため、完全にマニュアル化することは困難です。店舗における接客を科学することが必要です。
作 業 オペレーション マニュアル ルーチンワーク
接 客 ホスピタリティ 理念の共有 クリエイティブ
「作業」は、マニュアル化してスタッフ間の作業ムラを徹底してなくする必要があります。また、教える側の手間軽減にもつながります。マニュアル化で重要なのは、教える側の伝達手法の平準化と教えられる側の公正性です。先輩Aさんに教えてもらったことをちゃんとやっていたら先輩Bさんに怒られた。これが一番の離職原因です。教える側のマニュアルに対する理解も重要、どこかから買ってきたマニュアルでは頭のいい大学生に店長が馬鹿にされるだけです。
「接客」スタッフひとりひとりの心持ちの問題である接客は、マニュアル化できません。将来的にはビックデータからA.I.が判断する事になるかもしれませんが、まだ当分、先のようです。働く楽しさを教える為に必要なのはお店の理念を共有すること。時間給の額も大切ですが、自分が仕事をする意義、これを伝えることがいい接客を生み出す方法論です。

⑦ ディレクション業務[主に販促]

主に販売促進に関わる「ウェブ販促」「メニュー作成」では、コンセプトシートに沿ったデザインになっているかを常に確認する必要があります。
チラシ作成では印刷デザイン会社、ウェブ販促ではグルメサイト担当者がお客様に伝わり、かつ、お店の価値観をちゃんと伝える内容を考えては頂けません。集客にはどの広告を利用するかの選定と同時に、どう活用するかが最も大切。
活用の最大の要素は、コピーライティングです。過去はコピーライターを使うことも多かったですが、お店の内容をちゃんと把握してなおかつ、適切な「言葉」を生み出せるクリエーターは名古屋には少なく、高価です。
店長ができればそれが一番なのですが、パソコンが不得意だから飲食業をやっているという人が多いのも事実。特に初期販促はお店のイメージが形成される重要な時期ですから、「文章力」が必要です。