フードサービス業を米国ではヒューマンインダストリー[人間の産業]やピープルビジネスということが多い。それほどフードサービス業のマネジメントを語る上で『人』は最重要な資源であり、人材育成に関しては永遠のテーマである。また、日本のフードサービス業のほとんど全ての業態でパート・アルバイト[以下 P/A]の活用は、経営面から見ても不可欠な要素です。
しかし、昔から続く恒常的な人手不足はここ数年来全国規模で顕著となっています。人材育成以前に人数さえ集めることが困難な時代となっており、そのツケは店長を初めとする社員の労務負担に直結します。その結果、新卒の離職率は3年で30%、 5年で50%以上となっています。この状況ではフードサービス業の社会的な地位の向上と確立は望めません。また、今後は外国人の本格的な活用も避けて通ることはできなくなっています。

1.食堂経営時代

「外食産業」という言葉が新聞で使われ出したのが1970年代末頃からです。それ以前の時代を「食堂経営時代」と呼ぶことにします。1945年に日本は第二次大戦で敗北し終戦を迎えました。その後、数年は配給制度に頼るしかありませんでしたが、着実に復興に向かいベビーブームとりました。1948~50[昭和 23~25]年は「団塊の世代」を生み出し、飲食を初め全てのトレンドに大きな影響を与えました。
「団塊の世代」が小学生・中学生となる頃は正に食堂業が花盛りとなり、デパートの和食・洋食・中華[和洋中]料理が揃った大食堂や駅ビルの食堂街が活況を呈しました。映画館が全盛時代を迎え、繁華街を主体に家族経営の飲食店も多く誕生しました。一般庶民に取っては買い物や映画を見た後の正に「ハレ[非日常]」の食事でした。子供にはステンレスのワンプレートに小さなハンバーグや海老フライ、国旗の小旗の付いたチキンライス・プリンなどを盛り合わせた「お子様ランチ」。大人は中華風「五目あんかけのかた焼きそば」や「かつライス」など、家族での外食利用はこの頃始まりました。一方、都会では高級ホテルの高価なフランス料理や中華料理が富裕層に人気があり、大企業の宴会や有名人などの結婚式も盛んに行われました。
この頃の人材育成は繁華街の食堂でも高級ホテルでも和洋中にかかわらず、料理長を主体とする徒弟制度でした。鍋洗いからスタートして一人前の調理師[=職人]を目指す、通常8年を超える修行が当たり前でした。
また、飲食店での仕事と云えばコック[調理]を指しました。手に職をといった調理師志望者が多かったため、食堂からホテルまで2~3年はサービス要員として働き、その後にキッチンに入ることがルールのようになっていました。縦社会で先輩の指導も厳しく、店の上や近くの企業が借り受けた寮[賃貸アパート]などに集団で住み、休みも月に1~2回といった労働環境が通例でした。
現在でも著名なオーナーシェフの店では、調理を本格的に学びたいという志望者が多いため、調理場に入る順番待ちも兼ねホールサービスを経験させている。高級レストランや高単価の業態では、お客様目線で気配り以上のサービスとして食材や調理方法を含む商品説明は必須であり、どちらも経験することは人材育成に不可欠な要素です。

2.ファミリーレストランの台頭と外資系チェーンの進出

日本は1964年の東京オリンピックを契機として高度成長時代を迎えます。国民全体の所得が増加し、平準化する中で休日も増えました。都市郊外には巨大な団地が建築され、ニューファミリーと呼ばれる核家族化と車社会が進展しました。その結果、休日に家族揃って車で行く「楽しい外食」はレジャーとして浸透していきました。
ニーズを察知して誕生した郊外型ファミリーレストランは黎明期を迎えました。「スカイラーク」1号店は1970年に東京郊外の府中市ひばりが丘団地に誕生し、後に「すかいらーく」となり、経営危機や再生を経て、現在は社名として残るだけとなっています。
九州では1951年創業のロイヤルグループが、この頃既に福岡にセントラルキッチンを自社で有し活用していました。また、1970年の大阪万国博覧会では、当初運営委託により出店予定だったハワード・ジョンソンに代わり米国館に出店。チェーン化に自信を深め、翌年に「ロイヤルホスト」を福岡に誕生させました。ハワード・ジョンソンはこの当時米国でナショナルチェーンとして全盛期を迎え、チェーンレストランやホテルを運営していました。同様にデニーズや IHOP[インターナショナル・ハウスオブパンケーキ]、Mac [マクドナルド]や KFC[ケンタッキーフライドチキン]を筆頭とするファストフード各社は米国全土にチェーン化を進めており、日本でファミリーを対象とする外食チェーン化時代の到来を十分に予測させる視察対象でした。
この視察の主体となったのが米国の流通業を主体にチェーンストアを独自に分析・体系化し、「チェーンストア理論」として日本で確立して指導した故・渥美俊一率いるペガサスグループである。GMS[ジェネラルマーチャンダイジング・ストア]業態を奨励し、高度成長期の後押しもありダイエー、ジャスコ、イトーヨーカ堂といった流通業が隆盛を迎えました。
1969年の第二次資本自由化を契機にマクドナルドやケンタッキーフライドチキン、Mr.ドーナツといった外資系ファストフードが日本企業各社と提携して進出。ファミリーレストランではイトーヨーカ堂と提携した米国デニーズが1974年に横浜市にビルインで開店しました。
「ロイヤルホスト・すかいらーく・デニーズ」はファミリーレストラン御三家と呼ばれるようになる。その成り立ちからも分かる通り、人材育成面では米国の外食チェーンや日本のチェーンストア理論の影響を大きく受けている。ベースとなっているのは米国で発展したフレデリック・テーラーに代表される科学的管理法であり、店づくりやキッチンシステムを標準化・専門化・システム化している。その結果、社員や P/A の作業の単純化により、短期間での人材育成と生産性アップを目指しました。
日本で発展したチェーンストア理論では大衆価格での提供を目標とした商品設計を行います。例えば飲食チェーンのランチ価格は週刊誌2冊分などとして指導されました。そのためには素材となる食材のマーチャンダイジングを実施する必要がありました。さらに調理加工度を高めてキッチンの機械化や自動化によるシステム化を図り、原価と人件費の両面でコスト削減を目指しています。
組織的には職務[仕事の分担]ごとに分業態勢が確立されており、トレーニングによりマニュアルを元に標準時間による一定作業が求められました。飲食業でこれらのシステムを導入した場合の難点としては、美味しさや風味の追求が為されにくい点です。また、単純化された作業ベースとなるため、調理やサービスに対する意識が希薄化する恐れがあります。
とはいえ、短期間に効率よくチェーン展開するには人材育成も含め、ベストな手法でありますが、問題は2つ。一つはフォーマット化した業態の市場規模があるかということ。もう一つは顧客ニーズにマッチしなくなった場合、基本的には標準化されたワンパターンな業態や商品のため、全店が同時に劣勢となる可能性があることです。

3.マクドナルドのマニュアルオペレーション

1970年代にスタートした外資系ファストフードの中で、現在も注目に値するのがマクドナルドのマニュアルオペレーションと人材育成の仕組みです。ファサードやユニフォームといった店づくりを含め、常に時代への対応と変化を行い進化しています。
特に人材募集から面接、採用、オリエンテーション、初期教育、タイトルアップと呼ぶ P/A が P/A に教える段階的な育成の仕組みは学ぶべき点が多い。また、P/A のマクドナルドに対するロイヤルティは高く、米国のマクドナルドのシステムをベースに日本人向けにアレンジしていると考えられます。
ファストフードというメリットもあるが、職務とタイトルアップ、時給体系が明確であり、。また、先輩が後輩の P/A に教える際に、トレーナーとしての人間的な気づきを促す教育もなされており、単なる作業訓練を超えた人材育成面での動機付けの仕組みが秀逸です。
これらの基幹となっているのが1961年に創設された企業内大学の「ハンバーガー・ユニバシティ」だ。現在米国、日本、イギリス、ドイツ、中国など世界に7校あります。トレーニングのゴールは、「知識の習得ではなくアクションを起こすこと」。「個人の成長は組織の成長、ビジネスの成長へとつながる」という考えのもと、「Transfer of Training」というコンセプトを掲げています[マクドナルド HP より引用]。
ビジネスフォーラム、海外研修制度、ワークライフ・バランスなど社員にとっては魅力的な仕組みが企業として確立されており、常に時代に先駆け進化しています。その結果、アルバイトから社員になる人材も多い。周知の通り日本のマクドナルドはここ数年低迷が顕著となっています。国際的なマーチャンダイジング力による低原価優先の商品政策の品質面でのツケが、安全・健康志向の消費者ニーズに合致していないからです。

4.ローカル中堅企業のチェーン化への模索

1980年前後から大手ナショナルチェーンの台頭や上場に刺激され、創業10年くらいのローカル中堅飲食企業の多店化が進行しました。大手を手本に洋食以外のファミリーレストランとしての業態確立を目指した企業も多いようです。
見よう見まねでシステムやマニュアルを自社開発したまではよいのですが、メニューが必要以上に多様化したり、キッチンシステムの確立ができていないことが原因で衰退した企業も多いようです。特に自社の業態を中途半端な店舗数で多様化した企業は苦戦を強いられ、じり貧となっています。人材育成面でも食材の集中化といった面でもメリットが少ないからです。
現在までに企業規模を拡大し成功しているのは、例えば和食でいえば寿司とうどん、豚しゃぶ食べ放題といった業態です。大衆が出せる適正価格の範囲で原価面と人件費面でのメリットを追求し、労働分配率を戦略的に低く維持しつつ、生産性を上げています。当然寿司はロボットが握り、ネタを乗せるといった仕組みです。
人材育成面でもキッチンシステムとしても単純化でき、チェーンとして原価面でのマスメリットも追求できる。P/A 化も可能であり、店長を含めた社員数も2~3名以内と業態として1店、1 店の利益の出る体質が整備されています。
また、1980年代に入ると同様の考え方やシステム化を背景に居酒屋業態のチェーン化が急速化しました。サービス面は P/A 化が可能なため、人材育成面は原則として調理作業からトレーニングを図ります。その後、人件費・原価管理を主体にマネジメント教育を行い4年前後で店長に育成します。業態的に客単価は2、300円前後と高く、生産性も上げやすいメリットがあります。しかし、調理面では単純化・システム化を図る必要があり、商品開発を含め食材のマーチャンダイジング力が求められます。そのため大手チェーンは他社の売れるメニューの導入競争を相互に行っており、どこも似たり寄ったりといったメニューの同質化が進行し、かつての隆盛はありません。
その背景には若年層の飲酒離れや中高年の家飲みへの移行もありますが、「酔うために飲む時代」から「美味しく食べるために程よく飲む時代」への移行も無視できません。
チェーン故に人材育成による調理技術力の向上には限界があり、その結果、デフレによる競争激化が進行する中、客単価2、000円を切る低価格の業態開発が続いています。具体的には全品250円の均一業態や焼き鳥・焼きモツ・串揚げといった専門性のある低投資の業態開発が今も続いています。現在、「せんべろ」と呼ぶ千円でベロベロに酔える新業態の各種居酒屋も各地で隆盛しています。

5.行き着いた大衆専門店の時代

1990年代になるとオーバーストア気味のファミリーレストランとファストフードの時代から、大衆専門店の時代へと移行していきます。具体的には焼肉やトンカツといった大衆専門店の台頭です。
オペレーションを単純化でき P/A 化も可能で、客単価がファミリーレストランよりも確保できる業態。また、キッチンスペースの面でもメリットが出しやすく、転寿司業態などと比較しても最低必要人員数が作業ラインを組まなくて済むため、人件費面で調整しやすいというメリットがある。調理に関する人材育成面でも専門店のためメニュー数が少ない。その結果、仕込みの種類を減らすことができ、調理も単純化しやすいため料理好きの主婦など人材を選びトレーニングする必要はありますが、P/A に任せることも可能です。
フランチャイズ・システムとしての運営も可能であり、フランチャイザーとしてローカル企業が台頭するチャンスにもなりました。店数が増える程マスメリットを生かせ、本部としては食材供給による利益の確保と拡大につながります。自社で開発した食材仕入れ力を生かし、カニによる高級専門店のフランチャイザーとして成功した企業もあります。
これら企業の人材育成のポイントは本部として仕入れやメニュー開発、フランチャイザー向け人材育成システムの構築、スーパーバイザーといった、専門の人材[スペシャリスト]の育成が課題となります。

6. 異業種参入とメガフランチャイジーへの模索

この頃からフランチャイザーの加盟店[フランチャイジー]募集代行業務を主体に一世を風靡したのが、旧ベンチャー・リンクである。結果的には52億円以上の負債を抱えたまま倒産します。原因は各地域を分割したフランチャイジーとしてのテリトリー契約により、加盟金などを徴収しておきながら未出店の地域[フランチャイジー]を多数出したり、フランチャイザーから代行した指導業務が円滑にいかなかったりと、トラブルが多発したためです。
メガフランチャイズやマルチフランチャイズと称し、多くは異業種から参入した企業に様々なフランチャイズを展開させた。中には「牛角」のように成功したものもあるが、初めに出したフランチャイジー店の資金回収できないうちに、別業態のフランチャイジーを出店させるなど無理がありました。また、自社開発を含めフランチャイズ・システムの業態自体に問題のあるものも多くありました。
地域の飲食業として企業規模の拡大に合わせ、各種フランチャイズを組み合わせる手法は間違いではありません。しかし、その企業自体に人材採用力と育成力が無い限り、危険性は大きくなります。各フランチャイズはそれぞれの経営理念やキッチンシステム、オペレーションマニュアルも異なっており、それを自社で統括するには自社独自の経営理念や人材育成システムも不可欠となるからです。
また、各フランチャイズの店数が増えた段階で景気が低迷すると、固定的な人件費とともにフランチャイザーへ支払うロイヤルティや広告宣伝費の負担が重くのしかかってきます。
したがって、多様なフランチャイジーを自社で運営するメガフランチャイズには、企業としての資金面と人材面での余裕が無いと継続は困難。また、異業種から参入した場合、飲食業向きの人材の核になる担当責任者がいない限り、成功確率は低くなります。飲食業には向き不向きの人材があり、儲けるためだけなら異業種からの参入は避けるべきです。実際、米国のフランチャイザーの大手には異業種からの加盟を認めない企業も多くあります。

7.米国シアトル系カフェ業態の参入

「スターバックスコーヒー」は1971年米国でコーヒーの焙煎会社として創業しました。エスプレッソに泡立てたミルクを合わせるカフェラテを主体にテイクアウトもできる「シアトルスタイル」という業態を確立したのは1985年。日本に上陸したのが1995年です。
1980年からドトールコーヒーもカフェ業態として存在していました。しかし、当時は全国的に見ればいわゆる喫茶店が主流であり、「スターバックス」が持ち込んだ歩きながら飲むスタイルはトレンディーであり、一挙に流行しました。また、家でも職場[学校]でもない『サードプレイス』というコンセプトとフレンドリーな接客サービス、オープンでほっとできるファサードやインテリアは新鮮で急速な多店化を達成し現在に至ります。
人材育成面で注目すべきは、コーチングをベースとする教育とトレーニング体系です。各自の多様性を認め合い、自主性を重んじる企業文化は店舗で P/A にも生かされています。
特徴的なのはオリエンテーションを本部[現在は店舗]で2日間かけて行い、経営理念やコーヒー豆の基礎知識だけでなく、自社の先輩 P/A を教育してファシリテーターとして初期教育に参加させている点です。
また、その後に行われる専門的な技術研修でもコーチングを主体に各自の気づきや学びを、当日の技術的な目標設定を含めそれぞれのペースで学習させるのです。飲食業の教育・トレーニングにコーチングを積極的に導入した先駆者です。

8.カリスマオーナーのローカル居酒屋多店化と独立制度

2000年前後から各地でカリスマ性のあるオーナーによる居酒屋の多店化が急激に進行します。優秀社員の独立支援的な卒業制度も共通の特長といえます。この手法の先駆者は東京で『汁べゑ』などを展開する「楽コーポレイション」で通称お父さんと呼ばれる宇部隆文社長でしょう。
自由度の高い居酒屋業態でイニシャルコストを抑え、場合によっては自分たちで店づくり[造作]も行う。今の生き方や勤めている企業に疑問を感じていたり、ニッチの生活を何となく続けいたりする若者は多くいます。そして店を利用した際に、明るく楽しい雰囲気や気の利いた個性を生かしたサービス・オリジナル料理にファンとなるだけでなく、そこに自己実現とやりがいを求め社員として応募する現象は今も続いています。
心やスネに傷を持ち挫折してアルバイトになる若者も多く、オーナー社長が真剣にそれらの話を聴いてくれた上で自社の経営哲学や自分の生き様を語ります。自分が生かせる場と仕事、理解し合える仲間を得ることでオーナーを手本として独立を目指すことになります。オーナーにカリスマ性があり、しっかりした信念や経営哲学があると、初期投資の回収も早く利益率も良いため、店は創業10年を待たずに5店舗前後にすることも可能です。
初めから独立志向の若者が多いため、互いに支え合い支援を受けながら開業し卒業していきます。このことが好循環に繋がり、またやる気のある若者が入って来る。中には社長と共にといった人材も多く、地域に市場があれば多店化は可能です。
カリスマ性のあるオーナーも歳を重ねていくが、問題はここからです。居酒屋業態は感性の部分も多く、時流や競合他店など環境変化への対応が重要です。また、オーナーとして私欲との戦いも避けて通れません。私欲に負け、高級外車を乗り回したり自宅を豪勢に建て替えたり、海外旅行やトライアスロンなど趣味三昧になるなどして化けの皮が剥げると、カリスマ性を失うと共に経営も失速ます。有能な幹部から辞めていくことになります。
人材育成を続けカリスマ性を維持するには、オーナー個人と家族を含めた自制と社員の労働環境の段階的な改善が不可欠です。また、企業規模の拡大に合わせマネジメントと商品開発、人材育成面での役割分担を適性とやる気を見抜き有能な部下たちに委任する「組織づくり」も重要な課題です。これらができず年商5~15億円規模で社員が疲弊し潰れたり、数店に戻たりする中小店の例は各地にあります。

9.各種コンテストや覆面調査による情報共有化

ローカルでの若手カリスマオーナーによる各地の多店化した居酒屋業態の台頭は、『てっぺん』の朝礼で名を馳せた大嶋啓介社長等を主体に全国規模で連絡網ができありました。その結果、大舞台でのプレゼンテーションによるコンテスト形式の「居酒屋甲子園」や「S 1サーバーグランプリ」として結実しました。
また、やる気のあるオーナー達は覆面調査専門企業の調査を利用していることが多く、その企業主宰の「外食クオリティサービス大賞」も含め、居酒屋業界では3冠賞と称されました。その予選通過や入賞を目標として切磋琢磨が行われます。
これらのコンテストは各地の有能なオーナーや幹部の参加が多く、情報の共有化と人材育成に多大な影響を与えています。問題があるとすれば会場票での審査も多く、プレゼンテーション能力と勢い、そして会場内の従業員や仲間の組織票で審査が決まりかねない点です。
ここ数年来、単にオペレーションの仕組みやサービスに関しての情報共有だけでなく、企業経営に関する勉強会的な要素も濃くなってきています。財務戦略や労務管理面など企業として安定して成長するための基盤を人材育成も含め、学び合い研究し合うことが今後の課題です。

10.チェーン型オペレーション店長と支店型店長の2極化

オーバーストアによる小商圏化、セブン-イレブンを筆頭とするコンビニエンスストアの100 円コーヒーやドーナツなど新商品導入、各種宅配ビジネスなど『食』に関する競争は今後も激化するばかりです。
今後はチェーン型のオペレーション店長と支店型店長の2極化の方向に人材育成は向かうと予測できます。チェーン店では標準化・専門化・システム化されたオペレーションの徹底が求められ、逆に支店型経営では店長や地域による「地域化・個店化・個客化」による区別化[差別化ではなく、他店と自社の理念を元にした取り組みの「ちがい」を明確にすること]の徹底が不可欠です。
いずれにしても自分で考え、自分で行動できる『自立・自律型』の人材育成を企業としては図る必要があります。その究極のゴールは自分の店に対する経営者としての自覚=オーナーシップの醸成です。そのために不可欠となる企業としての基盤づくりは、『業績配分の仕組みづくり』と『ワークライフ・バランス』の取れた労務管理政策を早急にトップダウンで実施する必要があります。
今後は生涯一店長と云ったケースも避けて通れません。なぜなら大きな本部は不要であり、人材もスペシャリスト主体に限定されるからです。フードサービス業は企業規模にかかわらず1店・1店の売上高と利益の積み上げで企業として成立します。
「店長次第で売上高は2割、店舗貢献利益は3割変わる」。故に強くやる気のある・明るく元気な店長を育成すると共に『生涯設計』ができるようにすることが、企業規模にかかわらずトップの社会的責任であり義務であと考えます。

四半期決算などの投資家の方向を向いたアメリカ型の経営を推し進め、お客様目線を欠き、人材の育成を軽薄なマニュアルオペレーションに置き換えてきた飲食業において、現状の人材不足、過当競争は「当然の帰結」である。