需要・供給のバランス

1980年代から1990年代バブル経済期を経て、過去個人経営が大多数を占めていた飲食業界にも「外食産業」という言葉の出現と平行して、飲食店のレベルは特に設備投資、デザイン性などの面で大きく向上しました。「空間プロデューサー」という職業も一世を風靡しました。

かっこいいお店を創れば、行列ができる時代。
消費者の飲食店に対する評価基準は大いに磨かれ、飲食店側も多くのチェーン店や業種の細分化したデザイン性の高い店舗が生まれていきました。
参入障壁の低い飲食業は、他業種からの進出やフランチャイズチェーンによる過度の出店攻勢によって、現在は供給過多に陥っており、人件費の増大に伴う運営コストの上昇を価格に転嫁できない時代になっています。

外食から中食への変化

中食市場が急成長。 2017年には10兆円規模に。
中食の市場規模が拡大しています。日本惣菜協会が発表した「2017年版惣菜白書」によると、2016年の中食市場規模は約9兆8399億円で、2017年には10兆円を突破する見込みです。
中食市場は過去10年のデータを見ても、2006年から約22.6%増加しており、その成長率は著しい。一方、外食市場は、2008年から景気悪化などを背景に一時市場が縮小したものの、2012年以降は微増し続け2005年の水準に回復。2006年からの成長率は2.6%と、中食市場とは対照的に伸び悩んでいる状況です。

中食市場が伸びている背景
中食の市場規模が成長している要因として、高齢者世帯や単身世帯の増加、女性の社会進出といった社会構造の変化による影響が考えられます。家庭内で調理するよりも、スーパーやコンビニで惣菜を購入した方が効率的だと考える人が増えてきているのです。
また、リクルートライフスタイルが発表した「外食市場調査 2016年度外食&中食動向」によると、コンビニやスーパーの惣菜を「家で作るより本格的で美味しい」と思う人が増えており、中食についての考えがポジティブになっていることが窺えます。こうした背景もあり、今後も中食のシェアは増加していくと考えられています。

中食派が増えている時代に飲食店ができることは。
これからも中食需要が増えていくであろう状況を踏まえ、リンガーハットなど大手外食企業は、デリカッセンやテイクアウト専門店といった新業態で中食市場に参入し始めました。では、個人の飲食店はどうでしょうか。
最近は「UberEATS」や「LINEデリマ」といったサービスが登場し、配達業務をアウトソースして手軽にデリバリーが始められるようになりました。またテイクアウトに関しても、「楽天テイクアウト」や「テイクアウトナビ」などの事前予約サービスを活用することでスムーズに対応できるようになってきています。食事の摂り方が多様化しつつある今、中食市場への参入は、飲食店にとって新たな武器となっていくはずです。

希望する年齢層の減少[20代~30代]年齢別人口推移

戦後、我が国の総人口は増加を続け、1967年には初めて1億人を超えましたが、2008年の1億2、808万人をピークに減少に転じました。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、我が国の人口は2048年に9、913万人と1億人を割り込み、2060年には8、674万人まで減少すると見込まれています。人口の推移をより長期的に見ると、明治時代後半の1900年頃から100年をかけて増えてきた我が国の人口が、今後100年のうちに再び同じ水準に戻ることが見込まれ、我が国はこれから、これまでの歴史を振り返っても類を見ない水準の人口減少を経験することになります。

アルバイト確保が困難
若者の数は、1970年に約3、600万人、2010年に約3、200万人だったものが、2060年にはその半分以下の約1、500万人になると推計されています。また、全人口に占める若者人口の割合を見ると、1970年の35.0%[約3人に1人]から2010年には25.1%[約4人に1人]へと減少しており、2060年には更に17.4%[約6人に1人]にまで減少することが見込まれています。
さらに、大学の進学率は若者の絶対数の減少と反比例して、上昇を続けており、飲食業界の人員不足は、人口統計からも明らかになっています。アルバイトといえば飲食店が主流だった30年前とは状況が一変し、多種多様な職種の選択が可能となり、飲食店の人気がなくなっているのもこの状況に拍車をかけています。